■トトノエルギャラリーのはじまり

トトノエルギャラリーのある建物群は、東日本大震災の福島県の仮設・復興期の住まい・まちづくり支援を目的として、難波和彦さん、嶋影健一さん、八木佐千子さん、浦部智義さん、芳賀沼整さん(はりゅうウッドスタジオ)をコアメンバーとする県内外の建築関係者有志により設立された団体(NPO法人福島・住まいまちづくりネットワーク)の活動拠点かつ木造復興住宅モデル群『希望ヶ丘プロジェクト』として生まれました。

『希望ヶ丘プロジェクト』は、震災以降の住宅再建・復帰の際に応用可能な建築技術の試行として、下記4つのコンセプトを体現しています。

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①戸建の集合による小規模コミュニティの実践

②解体・移築可能な4つの木質構法モデル「縦ログ構法」「在来パネル構法」「WOOD ALC構法」「丸太組構法」の実践

③エネルギーへの取り組み(次世代省エネ対応やパッシブデザイン)

④仮設住宅の再利用・活用モデル

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各棟の設計者と共に、コアメンバーのひとりである芳賀沼整さんが中心となって希望ヶ丘プロジェクト建設が進められ2013~2015年までに4棟が完成し、以降、木造復興住宅モデルとして普及活動や環境実験等、NPOの拠点として利活用されてきました。

『希望ヶ丘プロジェクト』全景。トトノエルギャラリーは手前の丸太組構法の建物
『希望ヶ丘プロジェクト』コアメンバーによる打ち合わせ風景
計画時の『希望ヶ丘プロジェクト』の模型写真

■芳賀沼整さんの逝去

希望ヶ丘プロジェクトのコアメンバーである芳賀沼整さんは、出身地の南会津町に建築事務所「はりゅうウッドスタジオ」を設立し、木造建築を中心に地元から全国各地でプロジェクトに取り組む建築家です。特に、東日本大震災後は木造仮設住宅(ログハウス仮設住宅)の建設や建築家難波和彦さんらと開発した「縦ログ構法」を用いて、地元の木材を使いながら地域産業の創出、被災地の支援活動に尽力してきましたが、2019年12月21日に病のため61歳で逝去しました。

[芳賀沼整の経歴]

1958年 0歳 福島県南会津郡田島町生まれ(現南会津町)

1986年   28歳  建築士事務所 はりゅうウッドスタジオ設立 

1999年 41歳  東京理科大学工学部建築学科卒業

2002年 44歳  東北大学大学院修士課程修了

2006年   48歳 株式会社はりゅうウッドスタジオ常務取締役就任

2015年 57歳 東北大学大学院博士(工学)

2019年   61歳  12月21日 永眠(享年62)

芳賀沼 整さん

■希望ヶ丘プロジェクトから『トトノエルギャラリー』へ

生前、建築を通じて多くの人と関わり、地元のために奔走した芳賀沼整さんの思いを引き継いで、人とつながり合えるギャラリーカフェ「トトノエルギャラリー」として2022年にオープンしました。

名前の「トトノエル」には「整」の字とカフェで心を整えてほしいと願いを込めた。震災後、南相馬市の「塔と壁画のある集会所」などで協働した五十嵐太郎東北大大学院教授の研究室の卒業生の福岡咲紀さんが会津の民芸品、風車をモチーフにロゴを考案しました。

ギャラリー・カフェの建物は希望ヶ丘プロジェクトの「丸太組構法」棟を活用し、はりゅうウッドスタジオ(滑田崇志+斎藤光)の設計、はりゅうコンストラクションマネジメント(田中重夫)の施工で、「パッシブデザイン」や「ウッドチップ(床断熱)」を取り入れた当初の木造復興住宅モデルとしてのコンセプトを活かした、大きな「ロの字」型のテーブルがギャラリー・カフェをかたちづくり空間が誕生した。

改修前の様子
トトノエルギャラリー計画時の模型①
トトノエルギャラリー計画時の模型②
トトノエルギャラリーに改修後の様子

[写真クレジット]1枚目:新建築社/4〜8枚目:早川真介(早川記録)、[テキスト編集]早川真介(早川記録)