2025年7月6日(日) ̶ 7月30日(水)
OPEN 12:00 – 18:00 / 日 · 月 · 火 · 水曜日
木坂美生
企画協力:石上和弘 . Gallery Camellia 原田直子

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本展は、彫刻家 石上和弘さんとギャラリスト 原田直子さんの企画協力により開催する特別企画展です。当スペースは2022 年より写真作品を中心に展示を行っています。目の前に拡がる景色は同じであるにも関わらず、撮影者の記憶や想い、呼吸などにより、視えてくる輪郭は異ります。木坂美生さんの作品《Sand Box》は、” 写真 “という事象を超えて、必然のさまを体感させるものだと思います。トトノエル gallery cafe 芳賀沼智香子
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木坂美生| Mio Kisaca
能楽師石井信子を祖母に持ち、幼少期より能に親しむ。薪能などにみる野外劇を原風景として、日常の事物が、作為的ではないにも関わらず、あたかも演出されたかのようにそれ以上いっさい手を加える余地のない空間としてあるとき、シャッターを切っている。
1980 東京都中野区出身
2003 東京国際大学国際関係学部国際関係学部特別支援学校教員
(障害児教育)課程卒業
2004 東京FM『NEC ON THE ROAD AGAIN~101 のタカラもの~』に
写真家の卵として出演しアメリカ横断
2014 Gallery Camellia にて初個展
2019 『令和元年度 第30 回 五島記念文化賞美術新人賞』を受賞し、
東急財団助成による海外研修として2019 年5 月より
ニュージーランドネーピアを拠点に舞台芸術を学ぶ
HP https://miokisaca.net / IG kisacamio
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石上和弘 | Kazuhiro Ishigami
1966 年生まれ 静岡在住。彫刻家。主な作品に《裾野を歩く、山腹に寝転がる》(2013 年)、《アフターアップル》(2017 年)。第30 回UBE ビエンナーレ( 現代日本彫刻展)(2024 年) で《フォレストガウン》が山口銀行賞。その作品は宇部市・ときわ公園 彫刻の丘に展示中。
HP https://ishigamikazuhiro.com / I G ishigamikazuhiro
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「木坂美生のここがすごい!特別企画展《 Sand Box 》に寄せて。」
木坂美生の作品は、写真の名を借りたオブジェ(物体)なんです。写真としてではなく、質量を持った物体として存在している。だから作品の中に、時間の移ろいやら光の粒の表情やらを探さなくてもよい。はっきりと言えないのですが、なんだろう、対象の正面というようなもの(ここでいう正面とは、その物を捉えて離さない/ 離れない状況や機能までを含んだイメージです)が、フレームという輪っかをかけて引っ張り出され、オブジェとなってその場所にポンと現れているのです。ここで、マルセル ・デュシャンの《泉》を思い浮かべるとはっきりします。今はもう存在しないオリジナルの《泉》、それがいずれ無くなるであろう事を前提に、デュシャンが構図を設定し、ライティングも施した上で写真家が事前に撮影した、写真としての《泉》。この2つの間にあるのが、木坂美生の作品なんです。それも、限りなくオリジナルの《泉》の側に立っている。当時、この《泉》を目撃した人たちの戸惑いは、どの方向から見たかにかかわらず、物体の正面とでもいうべきその本性を見せられることになったからです。これこそデュシャンの発明だと思います。私たちはもうその現場に立ち会うことは叶わない。でも、木坂美生の作品に出会うことによって、叶えられているところがある。対象は、抜き差しならない平面の構成に正体を落とし込み、オブジェ(物体)となって、常に正面をさらしながらこちらを向いているのだから。私たちは新しい分野の体験をしているんです。私の願いは、自分の彫刻作品を木坂美生に撮影してもらうことではなく、木坂の作品のどこかに自分の作品が写り込んで存在すること。もしもデュシャンの《泉》のレプリカが木坂の作品に写り込むことがあったなら、どう見えるのか?デュシャンが呼び起こした戸惑いそのもののレプリカ、というドキュメントが、見る者にとって、いつでも産み出され続ける現場になるだろうと想像します。
石上和弘 2025 年 4 月16 日 記
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原田直子 | Naoko Harada
東京・銀座にある1932 年建築の旧アパート・奥野ビルの一室で現代美術を中心としたギャラリーを運営
HP https://www.gallerycamellia.jp / I G gallerycamellia
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トトノエル gallery cafe 芳賀沼智香子さんへ
木坂さんに初めて出逢ったのは2008 年、そして初個展が2014 年。月日は過ぎて2025 年を迎えています。その間(それ以前も)、木坂さんに起きていることは彼女のリーフレットに書いてあるので省きますが、出来事も視点も” シャーマンみたいだな” という印象がずっと変わらず、彼岸と此岸、永遠と一瞬、悲劇、静寂、尊厳、そんなことを作品にも彼女にも感じてます。木坂さんは空間ありきで展覧会を考えます。シャッターを切って、写ったものをカメラの画面で確認したときには、壁に展示した状態がみえているのではないかと。今回、totonoel さんで展示をする”Sand Box” は、恵比寿にあったMA2 Gallery さんの、上から光の射し込む特徴的な大きなグレイの壁を想定しての作品でした。totonoel さんはカフェでもあり、木の壁に囲まれて、大きなガラスのテーブルが空間を占めています。これまで著名な写真家を多くご紹介されているギャラリーで、木坂作品がどう受容されるのか、あらたな化学反応が生まれることを願うばかりです。
Gallery Camellia 原田直子
追伸ある美術関係者が、木坂さんの作品を『未知との遭遇』だと言ってました。『カメラ、写真、紙。知っている単語で構成された展示が、知らない感情に支配されている。それを誰もが知っている言葉で文章にするのが仕事だけれど、これは戸惑う』正確な文言は忘れましたが、そう受け取りました。写真と思わずに作品から放たれるものと対峙していただけるといいな。
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